求職者が会社を選ぶとき、給与や仕事内容と並んで福利厚生を確認するケースは少なくありません。
しかし、制度を整えていても「応募につながっていない」と感じている担当者も多いのではないでしょうか。
| ・求人票に福利厚生を載せているが、応募者の反応が薄い ・制度はあるのに、入社後に使われていない ・求職者が実際に何を重視しているのか分からない |
こうした課題の背景には、福利厚生そのものではなく、「比較される情報として十分に伝わっていない」という問題があります。求職者は制度の有無ではなく、「自分にとって使えるか」「働き続けやすいか」という観点で企業を見ています。
つまり、福利厚生は制度の有無だけでなく、内容や対象、使い方が具体的に伝わっているかどうかも比較されるポイントになります。
本記事では、採用時に福利厚生をどう伝えるべきか、どのような制度が比較されやすいのかを整理します。
転職で福利厚生はどれくらい重視されているのか
福利厚生を重視する求職者の割合
佐賀労働局が2024年12月3日に公表したLINEリサーチの結果では、魅力を感じる職場環境として「福利厚生が充実」を挙げた人が21.7%、応募をためらうポイントとして「福利厚生が不十分」を挙げた人が16.0%でした。
佐賀労働局のLINE登録者等を対象とした調査であり、全国調査ではありませんが、福利厚生が応募判断の一要素として見られていることは読み取れます。

ここで重要なのは、福利厚生が最上位項目かどうかではありません。
まず仕事内容、勤務地、給与、休日を確認し、そのうえで「その会社で働き続けやすいか」を補足的に見ます。福利厚生はまさにこの確認項目です。主役ではないものの、空欄にはしにくい情報だと考えると、実務での位置づけが分かりやすくなります。
なぜ福利厚生が注目されているのか
福利厚生が注目されている背景には、転職市場の変化があります。
給与や休日、仕事内容に加えて、福利厚生や有休の取りやすさなども確認される傾向があります。こうした中で、福利厚生や働き方に関する情報も確認される場面が増えています。
募集時には、労働条件や職場情報を適切に開示することが、ミスマッチ防止や入社後のギャップ解消につながるとされています。中途採用では、入社後の処遇や働き方に関する情報開示も重視されており、福利厚生も採用段階で確認される情報の一つと考えられます。
そのため、福利厚生は主たる判断軸ではないものの、応募を後押ししたり、ためらわせたりする要素の一つとみられます。
転職時に比較されやすい福利厚生の種類
生活に関わる福利厚生(住宅手当・食事補助など)
求職者に比較されやすい福利厚生の一つは、生活費に直接関わるものです。
住宅手当や家賃補助、食事補助、通勤手当などは、使い道が具体的で、入社後の生活をイメージしやすいためです。
働きやすさに関わる福利厚生(休暇・働き方)
働きやすさに関わる制度も、転職で比較されやすい項目です。特に休暇制度は、数字で説明しやすく、比較もしやすい情報です。
厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」では、2023年1年間に企業が付与した年次有給休暇の平均は16.9日、取得日数は11.0日、取得率は65.3%でした。また、特別休暇制度がある企業割合は59.9%で、その内訳には夏季休暇40.0%、病気休暇27.9%、リフレッシュ休暇14.7%が含まれています。

出典:厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」
佐賀労働局のLINEリサーチでも、魅力を感じる職場環境として「有休が取得しやすい」が31.7%に上っています。
将来に関わる福利厚生(退職金・医療)
将来に関わる制度としては、退職給付や医療支援があります。
健康診断や病気休暇のような制度は、長く働く前提では比較されやすい項目です。ここは制度区分に注意が必要で、健康診断は法令に基づく実施義務がある一方、病気休暇や医療補助は企業が任意で上乗せする法定外福利厚生に当たることが多く、同列ではありません。
だからこそ、採用段階では制度名を並べるだけでなく、法定の範囲なのか、会社独自の上乗せなのかを明確にしておくことが重要です。
転職時に福利厚生で見られているポイント
内容が具体的に示されているか
福利厚生は、抽象的に書くと伝わりません。「福利厚生充実」と書くだけでは、比較できないからです。
募集時には労働条件を明示するだけでなく、職場情報も分かりやすく伝えることが重要です。求人票や採用ページでは、制度名だけでなく、何に使えるのか、どのくらいの頻度で使うものかまで書いておく必要があります。
例えば「食事補助あり」よりも「昼食補助あり(アプリで利用・対象店舗あり)」のように具体化することで、自分が使う場面を想像しやすくなります。制度の価値は、利用場面の具体性で伝わります。
対象や条件が明確か
同じ名称の制度でも、対象が限定されていると印象は変わります。正社員のみ対象なのか、雇用形態を問わず使えるのか、勤務地によって差が出るのか。この条件が見えないと、制度があっても比較材料になりません。
利用シーンがイメージできるか
制度の立派さより、日常で使う場面が思い浮かぶかどうかです。制度の説明が具体的であるほど、求職者は自分の生活に当てはめて考えやすくなります。
採用ページで福利厚生を紹介するときは、制度一覧を増やすよりも、「毎日の買い物」「昼食」「通勤」「休暇取得」といった生活の場面に落として説明することが重要です。
採用で差がつく福利厚生の伝え方

ここまで見てきたように、求職者は制度の有無ではなく、「自分にとって使えるか」「日常で使う場面が想像できるか」といった観点で判断していると考えられます。そのため、比較されやすい福利厚生は、制度の種類よりも生活にどう使えるかが具体的にイメージできるものです。
抽象的な表現を避け、具体化する
福利厚生は、「充実」「あり」といった抽象的な表現では比較されません。
例えば、以下のような記載では、内容が分からず判断材料になりません。
・福利厚生充実
・食事補助あり
これに対して、以下のように具体化することで、「どの程度の支援があるのか」が明確になり、比較しやすい情報になります。
・昼食補助あり(月6,000円/コンビニ・飲食店で利用可)
・通勤手当あり(上限月30,000円)
利用シーンがイメージできる形にする
求職者は制度そのものではなく、「どの場面で使うか」を見ています。
例えば食事補助であれば、「アプリで利用できる」「対象店舗がある」など、日常の利用シーンを示すことで、自分の生活に当てはめて考えやすくなります。
制度の説明は、単なる一覧ではなく、「毎日の買い物」「昼食」「通勤」といった具体的な場面に落として示すことが重要です。
対象条件を明確にする
同じ制度でも、対象条件によって印象は大きく変わります。
・正社員のみ対象なのか
・雇用形態を問わず利用できるのか
・勤務地による差があるのか
これらが不明確な場合、制度があっても比較材料として機能しません。採用時には、「誰が使える制度なのか」を明確に示すことが必要です。
「使われている制度」であることを示す
特に休暇制度などは、「制度がある」だけでなく「実際に使われているか」が重視されます。
厚生労働省の調査でも有給取得率などの実績が示されているように、求職者は利用状況を判断材料にしています。
例えば、「有給取得率65.3%(平均取得日数11.0日)」のように実績を示すことで、「利用しやすい環境かどうか」が伝わりやすくなります。
福利厚生はあるかではなく「どう使えるか」まで伝える
福利厚生は「あるかどうか」だけでなく、「どう使えるか」まで伝わることで、比較されやすい情報になります。
求職者は制度の数ではなく、「自分が使えるか」「働き続けやすいか」という観点で企業を見ています。そのため、採用時には制度を並べるだけでなく、「誰が対象か」「どの場面で使えるか」「どのように利用できるか」まで具体的に示すことが重要です。
まずは新しい制度を増やす前に、既存の制度が伝わる形になっているかを見直すことが、応募につながる第一歩になります。日常の中で使う場面が具体的にイメージできる福利厚生は、採用時にも伝わりやすい特徴があります。
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