コラム

パートの福利厚生を見直すには?正社員との待遇差・利用条件・運用の確認ポイント

パート従業員も利用できる福利厚生制度を設けていても、現在の働き方や対象者に合った制度になっているとは限りません。

「規程上は対象になっているものの、勤務時間の関係で利用できない」「正社員とパートで条件が異なるものの、その理由が整理されていない」「制度はあるが、対象者に十分知られていない」といった状況があれば、制度内容だけでなく運用まで含めた確認が必要です。

パートの福利厚生を見直す際には、次のような疑問が生じやすくなります。

・パートの勤務時間や勤務場所に合った制度になっているか
・正社員とパートで福利厚生に違いがある場合、何を確認すればよいのか
・現在の福利厚生をどのような順番で見直せばよいのか

本記事では、パートの福利厚生を見直す際の判断基準と、現在の制度・対象者・運用状況を整理する手順を解説します。

なお、パートに適用される福利厚生の種類や社会保険などの適用条件については、以下の記事で詳しく解説しています。

パートの福利厚生を見直す理由

パートの福利厚生を見直す際は、「新しい制度を追加するか」だけを考えるのではなく、まず現在の制度が対象となる従業員の働き方に合っているかを確認します。

福利厚生には、法令上の要件によって対象者が決まるものと、企業が目的に応じて対象者や利用条件を定めるものがあります。そのため、パートという雇用区分だけで一律に判断するのではなく、制度ごとに位置づけや対象条件を確認する必要があります。

特に確認したいのが、正社員との待遇差です。

パートタイム・有期雇用労働法では、同一企業内の正社員と短時間・有期雇用労働者との間で、不合理な待遇差を設けることが禁止されています。待遇差については、個々の待遇の性質や目的に照らし、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、そのほかの事情を考慮して判断します。

また、制度上は対象になっていても、実際には利用しにくい場合があります。

例えば、昼間しか利用できない制度を早朝・夜間勤務の従業員へ提供している場合や、特定の事業所でしか利用できない制度を複数拠点の従業員へ提供している場合です。

そのため、福利厚生の見直しでは、「対象になっているか」と「実際に利用できるか」を分けて確認することがポイントになります。

パートの福利厚生を見直す際の4つの判断基準

現在の制度を確認したり、新しい福利厚生サービスを検討したりするときは、メニューの数や費用だけでは判断できません。

パートを含めて制度を運用する場合は、次の4つの観点から確認すると整理しやすくなります。

正社員との待遇差を説明できるか

最初に確認したいのが、正社員とパートで福利厚生の対象や利用条件に違いがあるかどうかです。

違いがあることだけで、直ちに不合理な待遇差になるわけではありません。重要なのは、その福利厚生が何を目的とした待遇なのか、その目的と条件の違いに関係があるかという点です。

ただし、職務内容と職務内容・配置の変更範囲が正社員と同じ場合には、パートタイム労働者・有期雇用労働者であることを理由とした差別的な取扱いは禁止されています。そのため、待遇差を確認するときは、まず働き方や役割の違いを整理したうえで、個々の福利厚生について違いを設ける理由を確認する必要があります。

例えば、出勤日にかかる食費を支援する制度であれば、出勤日数に応じて利用回数が異なる設計には、制度の目的との関係があります。

一方で、パートという雇用区分だけを理由として対象から外している場合は、その違いが制度の性質や目的に照らして説明できるかを確認する必要があります。

待遇差を整理するときは、まず制度の目的を確認し、正社員とパートそれぞれの利用条件を比較します。利用回数や補助額などに違いがある場合は、その違いを設けている理由まで整理しておきましょう。

また、短時間・有期雇用労働者から正社員との待遇差について説明を求められた場合、企業には待遇差の内容や理由について説明することが求められます。

そのため、「以前からこの条件で運用している」とするのではなく、制度ごとに条件を設定している理由を整理しておく必要があります。

勤務時間や勤務場所でも利用しやすいか

制度上の対象者にパートが含まれていても、勤務時間や勤務場所によっては利用機会が限られる場合があります。

例えば、社員食堂を利用できる制度でも、営業時間外に勤務する従業員は実質的に利用できません。特定の施設だけで使える優待も、勤務地によって利用しやすさが異なります。

制度を確認するときは、早朝・夜間・シフト勤務でも利用できるか、勤務する拠点によって利用機会に大きな差が生じていないかを確認します。また、店舗や現場などデスクを持たない従業員がいる場合は、社用パソコンだけでなくスマートフォンなどから利用できるかも確認したいポイントです。

利用できる時間帯や場所が限られている制度については、対象となるパートの勤務実態と合っているかも確認します。

すべての従業員が同じ方法で利用できる必要があるとは限りません。ただし、対象者として設定しているにもかかわらず、特定の働き方では継続的に利用しにくいのであれば、制度の提供方法を見直す余地があります。

対象条件と利用手続きが分かりやすいか

福利厚生制度を運用するときは、「誰が使えるか」だけでなく、「どうすれば使えるか」まで確認します。

例えば、対象条件として勤続期間、所定労働時間、出勤日数などを複数設定すると、従業員自身が対象なのか判断しにくくなることがあります。

担当者が毎回個別に判断する状態になっていないかも確認したいポイントです。

あわせて、実際の利用手続きについても確認します。

少額の補助を利用するたびに紙の申請書や領収書の提出が必要であれば、従業員だけでなく、申請を確認する管理部門にも作業が発生します。

福利厚生サービスを比較するときは、

対象者の登録 → 従業員への案内 → 利用・申請 → 承認 → 利用実績の確認 → 退職者などの登録変更

まで、一連の運用を確認しておくと判断しやすくなります。

従業員側の操作だけでなく、対象者の追加・削除、問い合わせ対応、利用実績の集計など、管理側にどの程度の業務が発生するかも確認します。

周知方法と利用状況を確認できるか

福利厚生は対象者を設定しただけでは、実際の利用状況まで把握できません。

利用状況を確認できる場合は、登録者数と実際の利用者数を比較するだけでなく、どの制度が、いつ、どの程度利用されているかを確認します。雇用区分や拠点別に把握できる場合は、パートだけ利用が少ない、特定拠点だけ利用されていないといった偏りがないかも確認すると、見直す箇所を判断しやすくなります。

ただし、利用が少ないからといって、直ちに制度そのものが必要ないとは判断できません。

制度を知らない、登録方法が分からない、勤務時間と利用可能時間が合わないなど、制度内容以外に原因がある場合もあります。

そのため、利用実績と周知方法をあわせて確認することが重要です。

なお、健康情報などを扱うサービスでは、企業側が確認できる情報の範囲や利用目的についても確認します。制度の利用状況を把握するために、どこまでの情報が必要なのかを整理したうえで運用します。

パートの福利厚生を見直す手順

福利厚生を見直すときに、最初から新しいサービスを探す必要はありません。

まず現在どのような制度があり、誰がどのような条件で利用しているのかを整理すると、見直す箇所を特定しやすくなります。

進め方は次のように整理できます。

現行制度・対象者の整理
→ 規程と実際の運用の確認
→ 正社員との違いと理由の確認
→ パートの利用実態の確認
→ 制度・規程・案内の見直し
→ 周知
→ 利用状況の確認

現在の制度と対象者を一覧にする

最初に、企業で現在提供している福利厚生を一覧にします。

サービス名だけではなく、制度ごとに次の内容を整理します。

  • 制度名
  • 制度の目的
  • 正社員の対象条件
  • パートの対象条件
  • 利用条件
  • 利用回数・補助額など
  • 申請方法
  • 根拠となる規程
  • 実際の運用方法

この段階では、新しい制度を追加することより、現在どのような条件で運用しているかを可視化することを優先します。

法令上の条件によって対象者が決まる制度については、現在の適用状況が最新の要件と一致しているかも別途確認します。

なお、短時間労働者に対する社会保険の適用範囲は今後段階的に拡大することが決まっており、厚生労働省は所定内賃金月額8.8万円以上の要件について2026年10月の撤廃を予定しています。対象者を判定する際は、その時点の最新要件を確認してください。

規程と実際の運用が一致しているか確認する

次に確認するのが、規程上の条件と現場での取扱いです。

例えば、福利厚生規程ではパートも対象としているにもかかわらず、現場では「正社員だけが利用できる」と案内していれば、規程と運用が一致していません。

反対に、慣例としてパートの利用を認めていても、対象者や条件が文書化されていなければ、担当者や拠点によって取扱いが変わる可能性があります。

確認するのは福利厚生規程だけではありません。就業規則や雇用契約時の説明資料、社内ポータル、従業員向けマニュアル、求人情報、現場管理者が使用する案内資料なども確認し、対象者や利用条件の説明に食い違いがないかを照合します。

正社員との違いと理由を確認する

現在の制度を整理したら、正社員とパートの条件を比較します。

確認するのは、利用できるかどうかだけではありません。

利用回数、補助額、利用料金、対象施設、申請条件などに違いがある場合も整理します。

そのうえで、違いがある場合は、各制度の目的と結びついた理由を説明できるか確認します。

例えば、職務内容や責任が異なることが、すべての福利厚生の違いを説明する理由になるわけではありません。個々の待遇について、その性質や目的に照らした確認が必要です。

特に、通常の労働者と同じ事業所で働く短時間・有期雇用労働者について、給食施設、休憩室、更衣室の利用機会を与えることが法律上定められています。利用料金や割引率などについても、不合理な相違を設けていないか確認する必要があります。

判断が難しい場合は、自社だけで結論を出さず、都道府県労働局や社会保険労務士などへ確認する方法があります。

パートの勤務実態と利用状況を確認する

次に、規程上の対象者だけでなく、実際に制度を利用できているかを確認します。

パートの主な勤務時間帯や勤務日数、勤務場所を整理し、福利厚生を利用できる環境があるかを確認します。特に、デスクや社用パソコン、会社用メールアドレスを持たない従業員がいる場合は、現在の案内方法や利用方法で情報が届いているかを確認する必要があります。あわせて、福利厚生への登録状況や実際に利用されている制度も確認します。

利用者数だけでは、利用しない理由までは分かりません。

必要に応じて簡単なアンケートや問い合わせ内容も確認し、「制度を必要としていない」のか、「存在を知らない」のか、「使いたいが使い方が分からない」のかを分けて把握します。

例えば利用率が低くても、周知方法を変更するだけでよい場合と、勤務時間や利用場所に合わないため制度そのものを見直す必要がある場合では対応が異なります。

利用状況を見る目的は、単に利用率の高低を評価することではなく、どこに利用を妨げる要因があるのかを確認することです。

規程と案内方法を見直して周知する

対象範囲や利用条件を変更する場合は、関連する規程や従業員向けの案内も更新します。

従業員への案内では、少なくとも、

  • どのような制度なのか
  • 自分は対象なのか
  • どこから利用できるのか
  • 申請が必要か
  • 分からない場合は誰に問い合わせるのか

が確認できる状態にします。

周知方法も対象者の働き方に合わせる必要があります。

会社のメールだけで案内しても、会社用メールアドレスを持たない従業員には届きません。勤務日が限られている場合は、一度の掲示だけでは確認できないこともあります。

社内アプリ、給与明細への案内、勤務先での掲示、入社時の説明など、自社の従業員が実際に確認できる方法を選びます。

制度変更後も、対象者数、登録状況、利用状況などを定期的に確認します。

利用が想定より少ない場合は、制度を廃止・変更する前に、対象条件、周知方法、利用手続き、勤務時間・勤務場所との相性のどこに要因があるかを確認します。

パートの福利厚生は「対象」と「利用実態」の両方を見直す

パートの福利厚生を見直す際は、制度の種類を増やすことから始めるのではなく、現在の制度、対象者、利用条件、実際の運用を整理することが出発点になります。

まず、正社員とパートで対象条件や利用内容に違いがある場合は、その福利厚生の目的と照らして理由を説明できるか確認します。そのうえで、パートの勤務時間や勤務場所でも利用しやすいか、対象条件や利用手続きが分かりやすいか、規程と実際の運用が一致しているかを確認します。

さらに、対象者へ制度が十分に周知されているか、実際にどの程度利用されているかまで確認することで、制度そのものを変更すべきなのか、周知や利用方法を改善すべきなのかを判断しやすくなります。

福利厚生サービスを新たに比較する場合も、メニューの種類だけではなく、パートを含む対象者の設定方法や利用方法、管理部門の運用方法まで確認することが必要です。

カロリパークスは、歩数・食事記録・睡眠・バイタル・健康診断データなど、日常の健康管理に接点を持つ機能を備えた福利厚生サービスです。

パートを含む従業員向けの健康支援や生活支援を見直す際は、現在の制度との違いや、対象者の設定方法、従業員側の利用方法、管理部門の運用方法を比較するための資料としてご確認ください。

参考・出典